Hi、皆さん、エビンです。
さて、今回も僕の「やりなおし英語JUKU」に通う社会人の生徒(30~50代)たちによる英文法の誤用傾向に基づいたクイズです。「前置詞の使い方」がテーマです。
前回の記事はコチラ
英語初級者(中学英語の一般的な基礎内容は理解しているレベル)が勘違いしがちなネタをご用意しました。全部で6問。生徒の正答率は・・・クイズの後で発表します。早速、トライしてみましょう!
前置詞の誤用例クイズ
Q. 文法的に正しい、または場面として自然な表現を1つずつ選びましょう。
(1) 「私は1階に降りていって、父と話をしました」
I went [ to downstairs / downstairs ] and talked to my father.
(2) 「チケット探してるんだ。ここに置いたんだけど。 — あら、あなたの娘にあげちゃったよ」
I’m looking for a ticket. I left it here. – Oh, I gave it [ for / to ] your daughter.
(3) 「うわ、2017年まで1ヶ月切っちゃったよ!」
Wow, it’s less than a month [ in / to ] 2017!
(4) 「えっと、5時に目覚ましをセットしたよ」
Well, I set my alarm [ for / at ] 5 a.m.
(5) 「違うよ、僕が住んでいるのは5階だよ」
No, I live [ in / on ] the fifth floor.
(6) 「私たちは琵琶湖の湖畔をブラブラしました」
We chilled out [ in / on / to ] the shore of Lake Biwa.
Answer Key
前回に引き続き、今回も正答率 約10%と、初級学習者には難しいクイズでした。
早速答え合わせをしていきますが、正解していても解説にあるポイントに一致していない場合はNGですね。
(1) I went [ downstairs ] and talked to my father.
【副詞に前置詞は不要 正答率12%】
まず前置詞の基本確認です。
前置詞は動詞などとは違い、前置詞だけでは表現力のない品詞で「名詞の前に」置いて、「前置詞+名詞」のフレーズで使います。名詞とセットが原則になるため、後ろの品詞が1つの文法的なポイントになり、今回のdownstairsは「下の階へ」という意味の副詞になるため前置詞はNGです。
ちなみに、なぜ副詞に前置詞が不要なのか?
副詞そのものに前置詞のニュアンスが含まれるからです。見方を変えれば、たいていの副詞は次のように「前置詞+名詞」で言い換えられます。
downstairs = 「前置詞to+名詞a lower floor」(より下の階へ)
ということで、副詞の前に(×)to downstairsとしてしまうとto to a lower floorのような重複の響きがあります。
(2) I’m looking for a ticket. I left it here. – Oh, I gave it [ to ] your daughter.
【場所の「到達」ニュアンスのto 正答率12%】
「到達」のニュアンスを持つ前置詞 toを用いたものです。「相手・到着地(人、場所)」に「人・物」が移動してたどり着くイメージで、相手(や移動先)がなければ成立しない他動詞give(…を与える)のような動作(動詞)と相性がいい前置詞です。「与える」に「受け取る相手」が必ず必要と考えます。
一方、他動詞buy(…を買う)のように1人でもできる動作は、toではなく「方向」ニュアンスがあるforを用いましょう。
(例) I bought it for Ayako.(僕はそれをアヤコのために買った)
買い物は1人でも可能ですが、誰かのために、と「人」に「気持ちを向けて」買い物をするイメージが前置詞forに合います。
ちなみに、1文目のlook forというイディオムは「…を探す」という意味ですが、look(見る)に「方向」の前置詞forをセットにすることで、「方向を変えて見る」→「探す」という表現になっています。
日常会話には動詞と前置詞を組み合わせたフレーズはたくさん登場しますが、こうした前置詞の感覚があれば、丸暗記せずにすみますから、より定着しやすくなります。
(3) Wow, it’s less than a month [ to ] 2017!
【時の「到達」ニュアンスのto 正答率8%】
「年号」=前置詞inのように中学英語では基本として叩き込まれるため、未だに反射的にinを用いる学習は多いですね。文意を考えると今回は誤りです。
問題(2)では「場所」に対する前置詞toの感覚をチェックしましたが、実は、toの「到達」ニュアンスは「時」に対しても用いることができます。「(ある時)まで」という意味で、その時間に「達する」までの時間をtoで示すことができます。
*less than(〜より少ない)
(4) Well, I set my alarm [ for ] 5 a.m.
【時の「方向」ニュアンスのfor 正答率2%】
「方向」を示すニュアンスを持つ前置詞forが正解です。(問題2の解説参照)
このforで「時」の「方向」を示し、この感覚が「先の予定」表現(予約)につながります。
一方、atは「時の点」で行動を開始した時点を指します。つまり、アラームをセットする行為を「午前5時」にしたという不自然な意味になるため誤りです。
(5) No, I live [ on ] the fifth floor.
【「(面)接触」ニュアンスのon 正答率18%】
前置詞onには「(面)接触」ニュアンスがあり、今回であれば5階フロアという「床面」 に触れているイメージがonに合います。これが正解です。
さてonは「…の上で」という日本語訳でよく知られていますが、「面」に触れている感覚があれば、「上」とは限りません。典型的な例で言えば「壁の絵」もa picture on the wallと表現できますので、前置詞onそのものが持つ感覚を押さえることが大切です。
(6) We chilled out [ on ] the shore of Lake Biwa.
【「(線)接触」ニュアンスのon 正答率6%】
慣れていないと、とても難しい問題でした。
この場面では、the shore(湖畔、岸)に「沿って」という感覚。問題(5)では前置詞onの「面」接触ニュアンスでしたが、「面」は面をつくる「線」も含まれる(表現できる)ため、湖畔、岸の境界ラインに触れるイメージがonの感覚に合うと考え、これが正解でした。
*chill out(くつろいで過ごす、[友人と]ブラブラする)
前置詞の「やりなおし」学習ポイント!
「時制」や「助動詞」では、話し手(書き手)の「感覚(気持ち)」が大切であることを話しました。では「前置詞」はどうでしょうか。「状況」が大切です。かつ、前置詞は名詞とセットになってフレーズとして機能する品詞ですから、名詞との相性も重要になります。
「in+大きな場所」、「at+時刻」のように単純化することも学生にとっては有効かもしれませんが、この情報だけでは問題(4)や(5)は解決できません。それぞれの前置詞のコア感覚と実際の場面・状況に紐付けなければ、より自然な発信スキルはいつまでたっても磨くことができません。
助動詞もそうでしたが、前置詞がうまく使えない原因として、日本語の意味に重きを置いて学習していることです。日本語はあくまでもダブルチェックのような位置付けで、今回の解説にあるような、まずはそれぞれの前置詞のベースになっているニュアンス感覚を、辞書などを参考に整理することが大切です。
こうした大きな1つのベースの感覚を養えば、問題(2)(3)の前置詞toのように、「時」や「場所」など表現内容が変化しても少し角度を変えて対応するだけで、同じニュアンスで対応できるようになります。「日本語」だけで押さえようとすると、まるで別々の用法として学習しなければなりませんので注意が必要です。「脱」日本語で文法を整理する意識が日常会話力につながります。
Thanks for reading!